通商産業省告示第二百三十一号

障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針を次のように定める。

平成七年四月二十日 通商産業大臣 橋本龍太郎

「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」

I 目的

障害者等が情報処理機器へのアクセシビリティを確保できるようにするため、キーボード、スイッチ、ディスプレイ、プリンタ等の入出力手段を改良し、特殊な入出力装置の接続を容易にすることによって、機器操作上の障壁を可能な限り克服又は軽減し、使い易さを向上させる。

なお、「障害者等」とは、機能が低下し日常生活を営むのに支障のある障害者及び高齢者をいい、 「アクセシビリティ」とは、利用者が容易に機器を利用できることをいう。 また、「障壁」としての主なものは次のとおりである。

II 対象機器

情報処理機器(パーソナルコンピュータ(パソコン)、ワードプロセッサ(ワープロ)、ワークステーション、メインフレーム等のコンピュータ本体及びその関連機器をいう。関連機器には、点字装置等の特殊入出力装置、音声装置、画像装置等 が含まれる。)

III 基本方針

この指針は、多くの障害者等が可能な限り多くの利益を早いうちに享受することが出来るようにするため、次の考え方に立脚して策定したものである。 即ち、

(a) 実現性重視
比較的短期に開発が可能なもの等実現性の高いものを優先する。ただし、音声認識技術や画面表示内容の並行出力機能のように、具体的な対応は難しいが、必要性の高いものについては、関係者の注意を喚起するため、【推奨機能】として記述した。また、フロッピ−ディスク等の外部記憶媒体や通信機器の標準化等のより広い関係分野での合意が必要なものは対象に含めない。
(b) 様々な障害者等への配慮 機能の低下の程度・種類に広範囲に適応できる機器の開発を優先しながら、様々な障害に対して可能な限りきめ細かく対応できるよう開発を進める。
(c) 開かれたシステムへの配慮 市販の情報処理機器に対する脱着の容易性を重視する。これはごく限定された用途の製品を否定しているものではない。なるべく多くの人々が使えるようにするには、開かれたシステムの方が望ましいと判断し、これを優先する。
個々の指針については、このような考え方によって選定されたものであるが、内容が多岐、多項目に渡るため、必要度や実現性の観点から、
(1)【必須機能】、
(2) 【重要機能】、
(3)【推奨機能】
と3段階に分類した。

(1)は多数の障害者等が必要とする機能であって、メーカの対応が比較的容易と思われるもの。
(2)は一部の障害者等が必要とする機能であって、メーカの対応がやや難しいと思われるもの。
(3)は技術等の観点から、現状では対応が難しいものの、今後の開発・製造が期待されるもの。

この指針を速やかに普及させるためには実現しやすいものから行うという現実的な発想が重要である。実現の可能性が高いものを重視する姿勢が、なるべく多くの人がアクセスできることにつながる。

IV 仕様

1 入力基本仕様(標準キーボード対策)

1−1 順次入力機能
 【必須機能】
文字キーと同時打鍵することで、その文字キーに別な意味を与えるキー、例えば、SHIFT(シフト)キーやCTRL(コントロール)キーを単独で押した時は、次の打鍵を待って入力文字を確定する順次入力操作を可能にする。

1−2 反復入力(キーリピート)条件設定機能
 【必須機能】
反復入力機能の停止及び開始時間(t1)と繰り返しの間隔時間(t2)とを利用者が設定できるようにする。
 【重要機能】
反復入力機能の有効/無効をキーグループ毎に指定できるようにする。

1−3 キー入力確定条件設定機能
 【重要機能】
各キースイッチの状態は、打鍵直後確定するのではなく、一定時間(t3)保持して初めて有効となり、その後、一定時間(t4)経過するまで次の打鍵を無効とするモードを用意する。

1−4 マウス代行機能
 【必須機能】
画面上での位置指定やドラッグ操作を標準キーボードのカーソル移動キー等でできるようにする。
 【重要機能】
ジョイスティック、タッチパッド(CRT画面に密着させたスクリーンパッドも含む)等の様々なポインティングデバイスから、位置情報が入力できるようにする。

1−5 トグルキー状態表示機能
 【必須機能】
トグルキー(例えば、英文タイプライタの大文字ロックキー等のように、押すたびにコンピュータの内部状態が変化するような機能キー)を押すたびに、新しい状態を音声等で知らせるようにする。

1−6 キーボード接続インタフェ−ス公開
 【必須機能】
標準キーボード又は代替入力装置の接続インタフェ−スを公開する。

1−7 キーガードの提供
 【必須機能】 キーガード(合成樹脂や金属の板にキーボードの各キーに対応する穴を開けたもの)を本体メーカが供給する。

1−8 キー位置の触覚識別手段の提供
 【必須機能】
主要キーの触覚識別手段を本体メーカが供給する。

2 出力基本仕様(ディスプレイ対策)

2−1 画面の拡大表示機能
 【必須機能】
ディスプレイ上の文字情報を拡大表示できるようにする。拡大する領域はカーソル移動キー、マウス等で指定するものとする。いろいろな視力の人に適合するよう数段階の拡大率を用意する。
 【重要機能】
グラフィック画面の拡大ができるようにする。

2−2 画面表示文字の音声化機能(かな漢字変換の候補文字音声化機能を含む)
 【必須機能】
音声出力機構を有し、かつ、その音量が調節できること。かな漢字変換の際は、(1)打鍵した文字と(2)変換候補文字が音声で確認でき、かつ、(2)については、音声で同音異義語の区別ができること。変換確定文字の音声化もできる方がよい。
 【必須機能】
イヤホンジャックを装備する。
 【必須機能】
画面の任意の領域の文字読み上げができるようにする。
 【必須機能】
必要に応じて、音声のON/OFFができるようにする。
 【重要機能】
漢字の熟語を正しく読めるようにする。
 【重要機能】
漢字や熟語の音声辞書の変更を利用者ができるようにする。
 【推奨機能】
英単語も読めるようにする。

2−3 表示中の画面情報出力機能
 【重要機能】
ディスプレイに表示されている文字情報を外部出力できるようにする。
 【推奨機能】
ディスプレイに表示されている図形情報を外部出力できるようにする。

2−4 出力情報の多重表現機能
 【重要機能】
ブザー等の聴覚を利用する警告情報を、画面等の点滅や振動素子等を用い、視覚や触覚を利用した別の手段で分かるようにする。また、ディスクドライブやCD−ROMドライブの使用状況が音や振動でも分かるようにする。
 【推奨機能】
文字情報を含む出力情報は、文字コード、音声、画像(静止画、動画)の3種類の信号を並列で出力できるようにする。

2−5 表示色変更機能
 【重要機能】
特定の色に重要な意味を持たせないようにするか、配色を変更できるようにする。

2−6 GUI(Graphical User Interface)対策
 【推奨機能】
操作対象となる対話部品がグラフィック情報として表現され、かつ、空間的に配置されているGUIにおいて、これらのグラフィック情報や空間情報を音響情報、触覚情報に変換して出力する。

2−7 音声情報の話速設定機能

 【推奨機能】
音声音、合成音等の音声出力情報の話速(発話の速度)が利用者によって設定できるようにする。

3 文書基本仕様

3−1 電子化文書の提供
 【必須機能】
利用者用マニュアルの文章部分を電子的記録媒体(フロッピ−ディスク、光ディスク等)に入れて提供する。
 【重要機能】
利用者用マニュアルの図形部分も電子的記録媒体に入れて提供する。

4 その他の注意事項

4−1 情報処理機器間情報送受信機能

 【必須機能】
情報処理機器間で文字情報が送受信できるようにする。

4−2 情報処理機器のFAX対応機能

 【重要機能】
情報処理機器とFAXとの間で文字・図形情報の送受信ができるようにする。

 【推奨機能】
情報処理機器からFAXへの送信時に、送信者の氏名伝達と電話からのFAXへの切り替え依頼等の情報を音声で送信できるようにする。

4−3 代替入出力装置について
 【推奨機能】
標準キーボードやディスプレイに代わる代替入出力装置をオプション装置として、本体メーカが用意する。

4−4 電源操作やリセットスイッチの操作性

 【推奨機能】
電源スイッチ、リセットスイッチ等について、使い易くすると同時に、誤動作が防げるような配慮が望ましい。

4−5 周辺装置の操作性

 【推奨機能】
外部記憶装置や入出力装置を容易に取り扱えるようにする。

4−6 携帯性への配慮

 【重要機能】
音声合成装置等の周辺装置を付けた状態で携帯して利用できるようにする。

4−7 問い合わせ窓口の明確化

 【必須機能】
本指針を採用する製造元各社は、自社製品に関する問い合わせ窓口を用意し説明書等に明記する。